『図書館内乱』『図書館危機』『図書館革命』 有川浩:感想、そしてライトノベルについて
ライトノベルというとそれほど数は読んでないけれども、あるいはそれは「ライトノベル」の定義が曖昧だからという部分もあって、ライトノベルと思って読んだけれども実は純文や大衆小説に部類されるものであったり、あるいは逆もあるかもしれない。
あるいは出版社や作家で区切るかもしれないけれども、たとえば桜庭一樹の『GOSICK』シリーズはライトノベルで、『私の男』は純文であることに疑いを持つ人はいないだろう。ということで作家で区切るわけでもない。
たとえばwikiを見てみると「ライトノベルの定義に関してはさまざまな考え方があり」と前置きした上で、
日経BP社『ライトノベル完全読本』においては「表紙や挿絵にアニメ調のイラスト(≒萌え絵)を多用している若年層向けの小説」とされている。また榎本秋は自身の著書における定義として「中学生〜高校生という主なターゲットにおいて読みやすく書かれた娯楽小説」としている。あるいは「青年期の読者を対象とし、作中人物を漫画やアニメーションを想起させる『キャラクター』として構築したうえで、それに合わせたイラストを添えて刊行される小説群」とするものもある。
とあり明確だけれども、たとえばおれの中での定義、それは明確に純文と分けるものだけれども、前述の「作中人物を漫画やアニメーションを想起させる『キャラクター』として構築したうえで、」の部分だろう。というかこの部分しか無いだろう。
つまりはライトノベルとは「作中人物を漫画やアニメーションを想起させる『キャラクター』として構築した小説」でよいのであってイラストは別にいらない。作風、文章の形や会話形式でもあるいは分けられるかもしれないけれども、それもまたキャラクターがベースになるものだろう。
というのは、純文学や大衆文学というのは虚構の物語の中で人物が登場し、もちろん出てこないものもあるけれども、その人物の心の機微を描く際にリアルに描くものであって、つまりはそういった人がどこかにいそうといったリアルの範疇で描かれるものであって、それは学生の話でもSFでもハードボイルドでもその人の描き方の例に漏れない。
一方ライトノベルというのは先述のマンガ的アニメ的キャラクターが登場するのであって、それが普通の学生の話であってもSFであってもハードボイルドであっても、実際にはそういう人はいないというのが明確なストーリーだ。ここがまた懸念点であって、実際にそういう人はいないというのが明確なのだけれども、それが実際にいるといった純文的解釈、つまりはそのような人はリアルでいるものとしてしまうと、さらにはそこに憧れたり自身をそういったキャラに方向づけてしてしまうとあるいは厨二的なものになってしまうのかもしれない。つまりは人の描き方で純文かライトノベルかが分かれる。
図書館戦争を読んだのは先週ぐらいであって、
こりゃおもしろいなっつって間に買っていた二作を挟んでしまったけれども、シリーズ本編第二弾から完結する四弾まで、つまりは『図書館内乱』『図書館危機』『図書館革命』を読了した。それはもう1日1冊ペースで一気に。そして本作はライトノベルだ。
ライトノベルは決して内容が軽いものではなく、前述のキャラクター性があるかどうかであって、たとえば本作であってもキャラクターが明確にアニメ風に描かれており、主人公、郁の性格や無鉄砲なところや教官である堂上、他にも同期や上司などキャラクターが極めてアニメ的に描かれている。ストーリーは図書隊の中で事件や恋愛、主人公の成長譚が軸としてあるけれども、その中には権利や表現、組織や正義についても描かれており厚みがある。
何よりも著者自身が着想を得たのが実際にある『図書館の自由に関する宣言』だ。
第1 図書館は資料収集の自由を有する
第2 図書館は資料提供の自由を有する
第3 図書館は利用者の秘密を守る
第4 図書館はすべての検閲に反対する
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
実際にあるものを飛躍させエンターテイメントへと昇華させた本作はぜひ本を読むことが好きな人が読むべき秀作であって、きっと本を読むということの尊さを再確認するだろう。
どこかに『図書館の自由に関する宣言』みたいな、まだ知らないけど実際にあるかっこいいものないかしら。
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