Rの罪と優しさ、あるいはコーヒーのサイズ表記とトールラテください。
物事には大きさがある。
寝坊しない限りは5時半に起き7時には職場近くのPRONTOでコーヒーをちゅらちゅらと啜りながらPCをカタカタしたり本を読んだりしているのだけれども、PRONTOでひとつ厄介なのはそのサイズ、つまりはカップサイズ、ドリンクの量の呼称だ。
量/サイズというとだいたい二つに分かれるのであって、最も慣れ親しまれた呼称で言うと、対象を問わず「S(Small:スモール)/M(Medium:ミディアム)/L(Large:ラージ)」である。そしてもうひとつ、ことコーヒーに限っては(Short:ショート/Large:ラージ/Grande:グランデ)といったけったいな尺度が出て来る。
この呼称はコーヒー屋さんそれぞれで異なるのであって、まとめてみると以下になる。
店舗 \ サイズ表記 | 小 | 中 | 大 |
ドトール | S | M | L |
スターバックスコーヒー | Short | Tall | Grande |
コメダ珈琲店 | - | - | - |
タリーズ | Short | Tall | Grande |
上島珈琲店 | - | - | - |
サンマルクカフェ | S | M | L |
珈琲館 | - | - | - |
喫茶室ルノアール | - | - | - |
星乃珈琲店 | - | - | - |
ベローチェ | - | M | L |
PRONTO | R | M | L |
-はワンサイズのお店。
サイズ分けがなされた店舗はS/M/L、あるいはShort/Tall/Grandeで分かれている。ここで罪なのがPRONTOである。R。
たとえば君がスターバックスに行きカフェラテをオーダーする際には、「スターバックスラテのトールをください!」とオーダーするかも知れないし、ちょっとこなれた感を出すために「トールラテを。」と短縮版でオーダーするかもしれない。
呼称はそれぞれ「スターバックラテのショートを」「スターバックスラテのトールを」「スターバックスラテのグランデを」と。つまりは単語をそのまま、略語にせずにオーダーするだろう。「スターバックスラテのエスを」「スターバックスラテのティーを」「スターバックスラテのジーを」というのは聞いた記憶が無い。もしかしたら「エス」でオーダーする人もいるかもしれないけれどもそれはS/M/Lと共通するからだろう。
一方、S/M/Lの店舗では、君は「ホットコーヒーのエスをください」「ホットコーヒーのエムをください」「ホットコーヒーのエルをください」と頭文字でオーダーするのであって、「ホットコーヒーのスモールを」「ホットコーヒーのミディアムを」「ホットコーヒーのラージを」とオーダーする人はいないだろう。あるいは「おっきいの」「ちっさいの」「まんなかの」とオーダーして店員に「Lですか?」と聞き返されるかもしれない。そもそもメニューにS/M/Lしか書かれていない例が多い。
そして問題のPRONTOである。Sにあたる、つまりは小にあたるサイズをR(レギュラー)と規定しているのである。
Regularというと「通常の」とか「規則的な」とかいう意味であって、つまりはいつもと変わりないサイズ、他と変わりないといった意味である。
さて、オーダーする際である。
「ホットコーヒーのアールをください」と言うか「ホットコーヒーのレギュラーをください」と言うか。おれの場合は後者である。なぜか。馴染みがないからである。馴染みがないというのはつまりは「アールをください」とオーダーすることで通じるのかという懸念が伴うからである。もちろん通じるんだけど。
たとえば友人との会話で服のサイズになったとして「服、アール?」と聞かれたら「アール」が何かわからず脳が混乱するだろう。つまりはサイズの尺度としての認識が不足している。
あるいは S = 小さい 、「小さい」というと得てしてがネガティブな印象を持つことがあるため、それを回避するためのものかもしれない。
たとえば女の子に「ちんこSサイズだよね」と言われると傷つくかもしれないけれども、「ちんこレギュラーサイズだよね」と言われると救いがあるのかもしれない。
それはRの優しさなのかもしれない。
我々は今、「小さい」に伴うネガティブな印象を取り払うか、Sを排除してRに挿げ替え優しい社会にするかの岐路に立たされている。