DeNAの『第三者委員会調査報告書の全文開示公表のお知らせ』を読んだ感想
最近3日1冊ぐらいのペースで文庫の小説読んでいて、それは今も例外ではなくてちょうど貫井拓郎著『乱反射』を読んでたところなんだけど、その手を止めて読み始めたのはDeNAの『第三者委員会調査報告書の全文開示公表のお知らせ』であって。本文だけでP.276、表紙や目次、用語解説を含めれば全体でP.306もある長編であって、仕事中やら家に帰ったり早起きして読んで二日かけて読み終わって疲れた。さらにはこの大作を3ヶ月でまとめた調査委員会にお疲れ様でした、と。これまとめるの大変だ。
ってことですっかり読書ブログに成り代わった本ブログで読み切った記念に所感を。
まず最初に背景や概要や経緯を先に。
WELQ騒動とは:本件の概要とか経緯とか
今回の取っ掛かりと言われいてるのは医学部出身でライターをしている朽木くんと言われていて、twitterで「検索して最初に出てくる医療情報」ちらちら言ってた気がするんだけど、本件が燃える前から問題提起はしていて(ツイート掘ってごめんやで) 、
2015年の4月段階で、
広告が検索結果を埋め尽くすネットの医療情報の現状を紹介しつつ、それを打破する医師による医療メディアの取材をしました。
— 朽木誠一郎 (@amanojerk) April 28, 2015
検索が命を脅かす時代 - ネットに広がるウソ医学から患者を守る医療情報メディア(朽木誠一郎) - Y!ニュース http://t.co/TxsWwymHoz
ってのが出てここからもずっと言及していて。
↑から2年半ぐらい開いた2016年9月にまた朽木くんの記事。
あとでまたまとめるけど、この段階で問題視されていたのは、命に関わる医療情報はちゃんとしようぜ、ということ。「正確性やその他一切について責任を負うものではありません」といった注釈だけ添えて責任を回避するような情報を載せちゃうのはダメだろ、というかんじ。しっかりと医療についてはちゃんと専門家やら事実や学術に基づく情報を出さないと。というのはその情報が正確というのが保証されないと、その真偽は見る人側に委ねられることになるわけで、間違った情報を信じてその行為をしちゃうと最悪死んじゃうこともあるんだぜ、その責任はどこにあるのよ、というところ。この辺りは去年の大統領選挙の際のフェイクニュースに通じるところもあるけど脱線するからやめとこ。
で、ここから加速する。
10月、「死にたい」で検索すると最初に出てくるのがWELQの記事にアフィリエイトが貼られていて炎上。SEOのすごい人であるところの辻さんが怒って広がる。
[死にたい]検索1位のDeNAのWelq。色々ダメな所だけどこれは最悪だ。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) 2016年10月22日
「死にたいと思う人は承認欲求が強い」→「自己承認力を高めるには自己分析が有効」→オススメしたいのが転職サイトなどで無料で使える「キャリア診断テスト」→アフィリンク!
死のうとしてる人から搾り取るなよ……
この辺りで、「あ、ユーザーのこと何も考えてないわ」ってのが周知されたってかんじかな。 で、10月24日、朽木くんがまとめて再度問題提起。
でそこから医療情報大丈夫?ってのがBuzzFeedやハフィントンポストやらネットメディアで取り上げられて広がっていって、大手メディアも乗っかるところが出てきて。
BuzzFeedの初出はこれかな。
2016年10月28日
信頼性のほか、どのようにして記事が作られているか、にちらっと触れてる。このときはその量については見えてなかったんだろうけど、ここがまた問題のひとつであって、一般の人が投稿できる形式にして、一般の人が書いたものだから(実際には"自由に投稿が可能なプラットフォームという性質があることもあり、"だけど←の解釈でよいかと)という責任回避。
で、ここからBuzzFeedがなんかこのサイトおかしくね?ってかんじで掘りまくる。
ここでも一般投稿の他にも一部編集部が依頼した記事もあるっぽい、ってかんじ。で騒ぎが広がる。
11月25日にDeNAが監修つけたり内容が適切かどうか判断しますよ、と発表。ハフポ。
このリード文というか、本文では二文目なんだけどこれをリードにしたのおもしろい。
ここでも燃えて、公開を維持したまま検証していったら、検証が終わるまで正確じゃない記事が公開されている可能性があるだろ、問題を潰していくんじゃなくて、一回全部非公開にして、大丈夫なやつを上げるのが筋だろ、という指摘も。
確認して問題があるものを消すか、一回全部消して、問題が無いものをあげるか、で大きな違いがある。 この辺りでお金かよ感がやばみを増してくる(公開され続けている=アクセスがある=広告収入がある)。
とはいえDeNAはここから個別記事を削除したり対応。順調にダメなやつが削除されていたところなんだけど、ここで並行して「なぜそのような記事があがったか」に対する検証が出て来る。
11月28日、ここで一般の人が投稿したからという形で正確性に対する責任を回避していたけど、そもそもメディア編集部、つまりは会社として書いてた記事がたくさんあるんじゃね?という問題が出て来る。
ということで記事の作られ方について問題が出てくる。この辺りで問題が二方向に分かれる。
A.記事として公開された医療情報の正確性
発端と同じくインターネット上にあがる医療情報はちゃんとしてないとダメだろ問題。
B.運営方法:記事がどのようにして作られたか
っていうかハイペースで記事をたくさん出てるし、公開された記事の中で編集部(会社)が書いた記事がめちゃくちゃ多いしマニュアルあるってタレコミあるし、どのようにして運営されてるの?
ってことで二手に分かれるけれども、先ほどのA問題のほうで11月28日夕方に東京都の福祉保健局健康安全部から来庁指示。これで詰んだのかなって思ってる。
11月29日にWELQの全記事を非公開。
で、疑わしいかもしれない医療情報サイト=Aが閉鎖されてめでたしめでたし、、、とはなるはずがなくて、Bが大きくなる。
同じく11月29日。
つまりはコピペやらパクリ問題なんだけど、つまりは他のサイトで誰かが書いた情報を自分とこのサイトに掲載して、アクセス集めて広告収入を得るサイト問題。
この件はかなり前からあって、ちょっと遡るけど2014年10月21日、ヨッピーさんが戦ってたりしてた。
この「BUZZNEWS」は今回のWELQ騒動にも関わっていてウケる。
ってことでBに話で時系列ちょっとずれたけど、本件の主格のDeNAに戻る。DeNAはDeNAパレットと称してメディア事業を進めていて、メディア運営のノウハウを横展開ようぜ、ってかんじで情報サイトを自作したり買収したりして計10サイトに広げてたのであって。
で、じゃあ他の9サイトで
B.運営方法:記事がどのようにして作られたか
ってどうなってるの?と騒がれていて、
12月1日。DeNAがMERYを除く8つのメディアを同日18時に非公開化を発表。 他サイトも記事の作成方法に問題あるのでMERY以外非公開化しますね、とリリース。
そこからさらに4日後の12月5日、MERYも全記事非公開にする、および第三者調査委員会に調査してもらうと発表。
で発表のとおり、12月8日にMERY全記事非公開化
このパクリメディア問題はひとつ潰したところでどんどん出てくるのであって、これが例えばどこかの中学生が作ったような、影響の小さい個人サイトであれば(それでもダメなんだけど)、まぁ中学生だし仕方ないかと、当人に叱りつつこういうのはダメだよ、と教えてあげるところなんだけど、大きな企業が乗っている。
で、12月9日には本件で再度ヨッピーさん。直接関係したのはサイバーエージェントだけど同様のDeNAに触れつつ投下。
で、DeNAが運営するメディア10サイトが全て全部非公開化される。ここからちょっと間が開いて年を越すけど、この間調査委員会ががんばって、
2017年3月13日、第三者委員会調査報告書を公開。および今後の対応について発表。
そして記者会見、ってところまでかな。抜けてがあったら教えてください。長い。
ってことでやっと感想文に入れる。
感想文
ということで、今回の件は問題がいろいろあって、それはもちろん調査報告書の9章(P.240)、10章(P.257)にもまとめられてるんだけど、騒動の発端、あるいは以前から指摘されていたものであったり、騒動が始まってメディアが取材したりして出てきた問題であったり、今回の調査報告書で出てきたものであったり。ひとりのユーザーとして接した時の問題だったり、同じくインターネットで事業をしている立場だったり、創作に関わる人の立場だったり、立場によっていろんな問題点が出て来るのであって、もちろん立場によって問題点の優先順位が違うので複雑。
何かしら検索したときにfind travelが出てきたときに見て、中身無いなぁとかあんま参考にならないとか感じて、以後検索に出てきてもウザいってかんじでスルーしてたぐらいの接点。なんか「◯◯(駅名) ラーメン」とかで検索するとしばしば出てきてた気がして食べログ引用しまくってたとかじゃないかな。あとはもしかすると医療系は何かしら検索したときに見たことがあるかもしれないけどサイト名は覚えてなかったぐらい。DeNAパレットって事業はどっかで見てて言葉は記憶があるかんじ。
ってことで項目ごとに羅列するけど、前提としてDeNAがやってたメディアの記事が全部が問題がある記事ではないだろうし、良い記事もあっただろうし、実際にMERYを支持する女の子はいるようだし。あと事業はボランティアでもないので利益がないと存続できないしお金儲けも必用ってのは大前提。どうお金儲けするかで今回は歪んでいったかんじ。
不正確/信頼性が担保されない医療記事について
特に医療は命に関わるのでもっての他であって、医者や専門家の監修や出典など正確性が必用なもので。メーカーならひとつコンテンツをつくるだけでも、見識あったりあるいはwebや書籍やら情報を網羅的にしっかり調べられるライターをアサインして、信頼性のある出典元を明示して、そこから専門家に見てもらって問題がない判断もらったり、あるいはこういった情報もあるといった補強をしたうえで、そこから関連法規のチェックをかけるぐらいには専門性を介していくので、どこの誰かのわからないライターの手に負えるはずがない。 クラウドソーシングやパクリ、記事の量産体制とかの問題とつながるところ。
特に医療はだけど、他の領域も共通で「僕はこう思いました」じゃないかぎり、まぁダメでしょ。まぁ「僕はこう思いました」も否定する論文とかあればアウトだけど。研究されていたり論文が多数ある領域を情報サイトとしてメディアで出すのは素人の手に負えない。関係者が素人だらけで手を出してはいけないところに手を出したってかんじでは。
こういうのはどういう言葉で表したらいいんだろう。たとえば食に関する論文もめちゃくちゃあるだろうけどCAFYで「◯◯のレシピ」みたいな記事は別に個人の主観なのでどうでもいいってかんじでやっぱ学術かな。
SEO
ユーザーとしては検索したら上からクリックしてくってのは当然のことで、発信する側からしたらつくったものは当然見てもらいたいので検索上位に行って欲しいというのは当然で、事業ならアクセス数がそのまま売上に影響するので上に行ってほしい。で、Googleもユーザーに有益な情報が上に行くようにがんばってる。
今回の件でアルゴリズムのアップデートもされて質の低いページは下がったりしてるけど、有益な記事だから上に行くっていうのがハックされないようにGoogleさんがんばれ。 で、出すほうは検索上位に行くために何をするかってところを、ハックじゃなくて中身に持っていくようにいしないと。
あと検索自体の信頼性が終わるとインターネットが終わるので、あとは有益かどうかをどう判断するかで、PVがあるから有益なのか、ページを見てる時間が長いから有益なのか、何を持って判断するかはGoogleさんが日々アップデートしていくしかないだろう。有益かどうかの判断を人力でハックされることがないってところがやっぱ大事で、最終的に人海戦術で有益だと判断されるとダメだし難しい。超絶極端にいうとGoogleが汎用的な人間を作り出してその人が有益かどうかを判断するようになれば。とはいえ一人ひとり人は違うので、あるいはその人はどういう形になるのか。「人間とは」とか「世界とは」みたいな領域に入ってくる。
もしくはサイトの中身をGoogleが検証してファクトチェックとかしてくれたら楽になるのにね。AIの出番だ。
ということで今回はキーワードハックをさせるマニュアル化、量産体制を構築する必用がありクラウドソーシング、その背景には収益化があって、ってかんじにつながる。
まぁちゃんとした内容が検索の1位なら誰も文句言わないしむしろ喜ばれる。
クラウドソーシング
クラウドソーシング、クラウドライターについては、P.243で「不当に安かったとは考えられないけど記事の不適切さに繋がった可能性がある」的にまとめられてるんだけど、問題の本質はやはり安さであって、調査としては双方の契約にもとづき受注したライターは金額も承知で引き受けてるからOK、ってかんじだけど発注する側に問題もあるし受注する側にも問題あるし。
仕事の仕組みはたとえば自分でできるようになるように勉強したり投資するとその費用は100万かかるとすると、習得した後に毎回1万の稼働で10万の売上なら20回で投資は120万かけて200万回収するって話で、外に依頼したら毎回5万かかるとしたら20回で100万投資で200万回収になるのでこれでも外に依頼するよねってかんじで正当な投資。
クラウドソーシングと言うのはこういった仕事を成立させるためのプラットフォームであって。たとえば絵がほしいとかプログラムを書きたいとか、何かをしたいけど自分でできなかったりするものを、外部のできる人に依頼してその対価を支払う、といったような社会活動で普通に行われていることをインターネット上でマッチングさせるような話であって、昔は電話帳で調べたり人に教えてもらったりしたりしていたものが検索に変わって、それがこの場所(クラウドソーシング)を見ると依頼できる人がわんさかいますよ、依頼される側もここに来れば受託先を探してる人が来ますよっつって、便利な場所だなっつってそれは理想であって、現実は予算の少ない、あるいは予算感がそもそもわからない、安値とその安値で請け負っちゃう仕事の無い人のマッチングになっちゃってて地獄であって。
当人同士の合意があるから契約は正当であって、不当に安いかどうかで言えば不当ではないけれども、安いかどうかでいえば安いの一択であって、外から見て安いよ、そんな仕事しててもいいことなんか何もないぜ、って言わないと国のGDPが下がる。何か仕事をする時には自分の市場価値が役割が何円かってのはもっと高めるほうがよいと思うし、書いた人はそれがあなたの価値ですよ、ってならないと仕方ないすな。
ここでの安さってのはつまりは1記事あたりの安さであって、1記事書いたら平均してDAUがこれぐらいあるから、収益的にはこれぐらいで、ってことはこれぐらい投資できるねっていうのがその安さっていう地獄。収益性、SEO、マニュアル、KPIなんかにつながる話。
事業買収について
これはまぁなんか騒がれてたりするけど別にどうでもいいっちゃどうでもいいし、当人間でそれぐらいの価値があるって認識があえばいいんじゃないかな。株主なら怒っていいけど。 とはいえ価値算定がミスった結果、上のクラウドソーシングやらSEOやら正確性の話につながるとは思うので、勝手に売り買いしてもいいからおれの生活とは関係ないところでやっちくり〜〜、ってかんじかな。
著作権(コピペ、あるいはパクリ)
これは長くなるから項目分けよう。
たとえばおれもヌートンで記事を書いてたりするけれども、ネタ探したり取材して写真撮ってインタビューしてそれを文字起こしして写真補正したりしてどう書いたらおもしろくなるかとか考えたりするのは結構時間もかかるし大変であって、文字起こしとかやりたくないし。ってのがわからないとコピペしちゃうんだろうなぁってかんじはする。まぁパクられたことないけど。うふふ。
で、問題になるのはどこからがパクりか、ってところ。これが人で分かれる。だから判例を持って著作権侵害を疑われるかかどうかの調査になっちゃうんだけど、たぶん著作権侵害とパクるってのが定義部分で人によってずれちゃってる気がするし、おれのパクるが君のパクるではないだろうし、おれが考える「パクる」が間違ってるかもしれない。法律が著作権でパクリは倫理で。
ってことで
テキストのコピペについて
本調査ではたとえばテキストについてはP.37〜で、
・複製権/翻案権侵害の可能性がある記事
・複製権/翻案権侵害の可能性がないとはいえない記事
を例を持って出してるんだけど、ここで間違えてはいけないのは、パクったかどうかを判断したんじゃなくて、あくまで複製権侵害の話なので、ありふれた表現や「著作物と認められるかどうか」の基準なんかと照らし合わせた結果というところ。
これでいうと、
・複製権/翻案権侵害の可能性がある記事
・複製権/翻案権侵害の可能性がないとはいえない記事
の部分は読んだらわかるけど、「パクる」って言葉で照らすと、おれはどっちも完全にパクってると思う。とはいえ一応ありふれてる表現だから著作と認められるわけではないけど全部セーフじゃなくて、ビックリマークとかも同じだし、複製権侵害はしてないけど倫理的にアウトな複製だろうってのもカウントしてたりもする。
ってことで、複製はカウントしてるけれどもパクりと思われるのを全てカウントしているわけではない。
というと判断基準は一致度になるわけで、判断するツールとして引用分析ツールで30文字以上の文章の中で90%が一致してるものをカウント、90%じゃなくても目視でも見てるってのもあったので大変だなっつって。ここはどれぐらいがひっかかるか、さらにはこれをどう判断したのかって線引きはちょいほしいかも。
たとえばP.33の
一方で、上記のとおり、本サンプル記事の中にはライティングシートその他の各サイトにおいて用いられる記事作成指示書において記事作成に当っての参照URLの指定がされていないものが大半であり、
の91文字を
---
一方、上記のように今回のサンプル記事では、ライティングシートや、各メディアでライターが記事をライティングする際に編集部から送られた指示書では、このサイトを参照するようにといった指定はほぼなかったのであり、
---
にしたらどういう判断なんだろ。雑すぎるけど。まぁ完全にパクリのつもりだけど90%は越えてないし複製の点ではセーフかしら。これがセーフならアウトだ(?)ってところはあるかも。で、これも人によって判断が分かれるところかも。
画像について
で、画像については直リン、サーバ保存、とかツッコミどころがあるんだけど、報告書内では
サーバ保存、直リンどちらも
契約に基づく著作権者のOKがあるもの・・・OK
口頭やメールで著作権者のOKがあるもの・・・OK
ライターが撮影したもの・・・OK
著作権者許諾はないけど事業者許諾があるもの・・・OK
著作権者許諾が無いもの・・・NG
という判断のご様子。
で、ひっかかるのはやっぱ4番目の「著作権者許諾はないけど事業者許諾があるもの」で、これはつまりはtwitter埋め込みとかpinterest埋め込みとか、事業者OKだからよいよね、ってことで、まぁこれも倫理的にどうよってところ。
これも人によってそもそも何が悪いのとか、アップしたのおれじゃないし、とか、完全にずれるところ。物によるのもつらい。著作権ロンダリングについては確認困難および事実が認められなかったから無しってことに、ってなってる。
ってことで、報道で最大で74万7643個の画像が著作権侵害している恐れがあるとか言ってるけど、「著作権者許諾はないけど事業者許諾があるもの」が直リン型(たぶんtwitter埋め込みとかは直リンカウントだろう)41万2699件あって、そこもうちょい掘れよ感はある。法じゃなくて倫理で。
あとサーバ保存型でカウントした事業者許諾ってどういうのを言ってるんだろう。
サーバ保存型の「著作権者許諾はないけど事業者許諾があるもの」の説明でSNSのAPIを利用して画像を利用って言いつつ「著作権者許諾はないけど事業者許諾があるもの」にもサーバ保存と直リン分けてるのでどういうのを言ってるんだろう。どのサイトか言ってくれればすっきりするのに〜〜〜。
サーバ保存と直リンについて
調査書内で出てきた話として、ペロリ社を買収する段階で、サーバ保存で著作権にひっかかる可能性がある物があるから買収条件として直リンに変えなさい、ってのがあったんだけどここでズコーッとなってしまうのはやむなし。
メディアで画像使うなら
・自分で撮ったやつ
・フリー素材とかフォトストックサービスの事業者許諾、もしくは直接著作者許諾があるもの
をサーバ保存するしかないだろうと思うんだけど。
もちろんtwitterやらinstagramやらpinterestを埋め込むのもありなんだけど、↑の条件の画像がツイートされたものっていう裏ぐらい取るのがメディアの責任だろう。パクツイを埋め込むとかアウトだし、パクツイをつくってロンダリングするのもアウトofアウト。pinterestロンダリングしてたみたいな話もあったけど調査書内では無かったってなってるし(P.44)、無かったら無かったでいいんじゃないすかね。よかった、ロンダリングされた画像は無かったんだ!
マニュアルにおけるコピペ推奨について
P.234のアンケート内でも「コピペ推奨と感じた」と「コピペ推奨と感じたことはない」が1:2で分かれてるんだけど、まぁ前者がいる時点でアウトだろう。 たぶんコピペの定義も人によってずれる気がする。コピペは文字通りコピーしてペーストすることだけを指すのか。コピペして文末変えたらコピペじゃなくなるのか、見出しの数を細分化したらコピペじゃなくなるのか。
たとえばWELQのマニュアルでは「参考サイトの文章を、事実や必用な情報を残して独自表現で書き換えるコツ」ってのが出てるんだけど(P.182)、この段階でコピペ推奨はしてないけどパクリ推奨してるやんけって話であって、そもそも「書き換え」の時点でパクり判定してもいいんじゃないか。とはいえこれは「コピペ」ではカウントされないのか。「事実や必用な情報を残して独自表現で書き換えるコツ」ならいちいち書き換えずに出典出して引用すればいい話なんだけど、中身が無いから引用しかなくなるんだろなっつって。なんで「事実や必用な情報を残して独自表現で書き換える」必用があるのかってところを考えたら自ずとアレ。倫理だ、倫理。
ってところまでが著作権についての感想。
マニュアルがあったこと
まぁメディア運営でマニュアルがあるのは別にいいんだけど、「記事を量産するための」になるとそこかい、となる。
質よりも量に走ったこと
KPIやビジネスと関連するところ。どっちもできれば最高だけどね。質を担保するぐらい投資できなかったってわけで、つまりは一つの記事を価値を前提として低いものと考えていたってことじゃないかしらね。それこそプラットフォームの一面が一応あるんだから質が高いものが一般から集まる環境が作れればよかったんじゃないですかね。どうできるかわからんけど。
プラットフォームを称してほぼメディアだったこと
一般ユーザーからの投稿が集まるサイトと称して実は会社で記事を書いてましたって話。CGMだ!勝手にコンテンツ資産が増えていくぞ!ってしたかったんだろうけどこれが無理だったから自社編集に走ったわけで、結果的にユーザー投稿の割合はMERYで14.5%、FindTravelで10%、他では5%以下(P.242)。さらには問い合わせに対してプロ責法出したのは終わってるのであって、つまりは会社で書いた記事なのに「一般ユーザーが投稿したものなので」って理由で問い合わせに対して返答したのはひどみがある。純粋にウソついてるってことだからなぁ。
BUZZNEWSを運営していた人(調査書内のE氏)を入れたこと
常々思ってるんだけど炎上するのはいつも人であって、たまたま運悪く例外的に炎上ってのももちろんあるとは思うんだけど、たとえばキングコング西野とかはよく炎上してるし、「お、またやってるな!」ってかんじなんだけど、持論としては炎上する人ってなんで炎上してるか理解してない天然な気がしてる。たぶん炎上する人は匿名で別アカつくっても炎上するんじゃないかな。
で、E氏は実際に面談して収益性のある事業をやめて、謝罪文を掲載することを条件にして入社ってあるんだけど(P.66)、その結果こうなったってことは本人も何の謝罪したか理解してないし、条件出したほうも何の謝罪が必用で何の反省が必用だったか理解してなかってことっていいんじゃないすかね。
お金儲け
ビジネスと言い換えよう。買収やらどれぐらい稼がないといけないかとかで現場にKPIが課された結果がまぁ本案件のとっかかりだろうね。おれもお金ほしい。
あとは報告書内で出てきたところで、
チェック体制
何をチェックすべきかはっきりしてたんだろうか。もちろん関連法規はチェックされるべきであって、どこでもそういうチェックは必用なんだけど。チェックしてたけど量が増えるにつれて記事のチェック体制が機能しなかったとかなんとかなんだけど、ちゃんとしたライター使ってたらコピペとかするはずもないので、量産が課されたのでちゃんとしてるかどうかわからないライターを雇う必用が出てきて無駄にチェックする必用が増えてそこが追いつかなくなって崩壊ってかんじかな。
チェックというか編集すべきだったってかんじかしら。どうやったらより質が高くなるかのチェックしろし。何をチェックするべきだったかと、そのチェックが必用な環境になったところでズレてた気がする。
報告書の数値について
一個もやっとしたのは問い合わせ件数であって、たとえばP.211、画像の無断利用について「MERYでは1万記事中40件(0.40%)」ってかんじで書いてて0.4%って数字で小さく見える人もいると思うんだけど、この数字を出す際には、「画像の無断利用に気づくのが何%いるか」「気づいた場合に何%の人が問い合わせるか」って数字も出さないと。もやもや。
現場の指摘が届かなかったこと
なんかリスクが囁かれたけど結局通った、みたいなことがちらちら出てくるんだけど、なんかメディア事業におけるリスクって本案件なのか感がちょっとある。中にはちゃんとした人もいたんだけどダメだったってことかな。
意思疎通ができていなかったこと
意思疎通ってか、この事業は何をもってどういう価値を出してどういう風に利益化するみたいなのが無いレベルじゃなかろうか。まぁなんでもだけど、役割の明確化とコンセンサスができてなかったんじゃないかしら。
再発防止策
で、
DeNAが掲げる「永久ベンチャー」は免罪符ではなく、目指すべき企業としての在り方を正しく認識しなおすこと、数値偏重から公正なマネタイズに意識を変え、事業の在り方について再検討すべきこと、事業参入後の必要十分なチェックや振り返りを継続できる体制とプロセスを検討すること、キュレーション事業に関して適切な再検討を実施することを挙げている。
ってあり、調査報告書では
P.240の9章で
1.買収プロセスに問題があったか・・・なし
2.メディアかプラットフォームか・・・プラットフォーム部分はあったけどほぼメディア。問い合わせに対してプラットフォームとしてプロ責法の回答をしたのはアウト
3.クラウドソーシング会社と締結していた契約の実態はどう評価されるべきか・・・記事の責任はDeNAが持つべき
4.記事単価が安いかどうか・・・不当に安いというわけではないけど、不適切な記事を生む原因になったかも
5.法律上、倫理上の問題があったかどうか・・めちゃくちゃ長いけど、問題があった可能性があるものがあるってかんじ。マニュアルやルールの不備があったよね、チェック体制もダメだったね、
とあって、次にじゃあどうするかとか、今やってる事業でどういった対策がなされるかってところかな。
やっぱ本件はコンプラ案件ではあるんだけど、法令遵守は大前提で、つきぬけたところは倫理なかんじがする。
ってところが感想。
これから読む人のために
本件どこが問題だったか振り返りたい人もいると思うけれどもボリュームが多くてゲンナリしてしまう人のために、章ごとに何が書いているか。要約版より全文読んだほうがたぶんおもしろい。
あとこれから読む人は章の構成が、
章→数字→(数字)→アイウ→(ア)(イ)(ウ)
の構成になってるから今全体の構造の中でどこにいるか迷子になった際にはこちらを。
1章の6にざっくり書いてるけど
第1章 当委員会の概要
委員会の説明。どういう人たちで構成されたかとか、どういうデータを取得したりヒアリングしたかとか、どういう調査を行ったか。 まぁ別に読まなくて良いかも。ツッコみたいところを探したい人は読むと良い。
第2章 本報告書が前提とする事実
定義が明確じゃない用語を報告書内でどう定義しているかだったり、登場してくる会社名や事業の説明、その会社でどういった人が何をしているか(本件で何をしたかじゃなくて役職とか、通常何をしているかといった前提部分)の概説。あとは関連法規の説明。こういうものは著作権侵害で、こういうものは侵害じゃないといったところの事実紹介。あとはまぁ後述するけどプロ責法は一般の投稿に対して適用なので、DeNAが編集した記事に対して調査したよ、とかの前提。
言葉の定義がずれると議論全体がずれるので大事。たとえば「〜〜法はそういことじゃなくて、」って反論したいなら別に反論してもよいけど、この調査報告書ではこう定義してますよ、っていう宣言みたいなものなので、あ、そうなんですね、と受け入れるしかない。前提をツッコみたいなら別にツッコんでよいけど、前提が擦り合わないと全体が崩れるので大変。「〜〜こういう理由でこれは見ないことにした」みたいな物に対しては「まぁ見たらもっと問題点が出てきたかもね」みたいな意見は無いものに対する意見なので別によいかと。
可能なら「パクリ」って言葉の定義をしてほしかったけどまぁ無理だろう。
第3章 著作権関係の個々の記事の内容(テキスト及び画像)の調査
まずどういった形でサンプリングしたかとか、数でいうと400なんだけど、こういう理由で400として、その400に対してどのようにテキストや画像を調査したか、その結果何記事がひっかかりましたよ、みたいな内容。
第4章 DeNAにおけるキュレーション事業
最大の物語感があるのがこの4章であり、DeNAの沿革やなぜキュレーション事業を始めたか、どのような構想を持ってペロリ社とiemo社を買収したか、その経緯や買収の際の条件や、既存メディアを買収したあとでどのようにメディア事業を展開していこうかとかが書かれている。
時系列でどのメディアを立ち上げて誰がどのポジションに行って、どう強めていこうとか、各サイトのKPIとか、どうSEOに寄ったかとかクラウドソーシング利用に至った経緯とか、記事を量産するためのマニュアル作成やら運営体制が書かれていて、ざっくりいうとどう歪んでいったのかが読めておもしろいと思いつつ頭がクラクラしてくる見せ場が本章。
本章の感想は総じて「読み進めるに連れて頭がクラクラしてくる」でお願いします。
第5章 個別サイト
ここが一番長い。全10メディアにおいて、どのようなコンセプトであったり体制に触れつつ、実際にどのような運営がなされていたかが書かれている。運営についてはどのような体制で誰がどのように記事を書いて、誰がチェックして(記事チェックやコピペチェック。あるいはチェックしなかったり)、量産する方法やマニュアル、記事作成のルールについて詳細に書いていておもしろい。さらにはユーザーからのクレームについても。
それぞれのサイトでユーザー投稿の割合とか出ててブホッってなるところ。まぁここでメディアかプラットフォームかが暴かれておもしろ。
ここでは各サイトの実績の数値が出ていて(P.97)数字見て評価基準とかを考えたり分析が好きな人は読んでておもしろいかと思われ。このクソブログのほうがダウパ(1記事当りのDAU)の数値はいいぞ!
第6章 DeNAの他の事業の状況
ゲーム事業とヘルス事業について。「他の事業ではコンプライアンスは結構ちゃんとしてるはずだよね」的なことが書いてる。 まぁ本件は文字とテキストによる情報というものに対する意識の違いだろう。
第7章 キュレーション事業に対するチェック機能
DeNA内で何をどのようにチェックするのか、その部署や体制について書かれていて、たとえば法務部は買収段階で何をチェックしたりとか、カスタマーサポートはどうあって、とか。 やっぱメディア事業において何をチェックしたらいいのかわかってなかったんじゃないかな。
第8章 役職員、クラウドライター等からの意見募集の結果
役職やライターからのアンケート結果。コピペ推奨と感じたかどうかの数や直接の意見が書かれている。
ネガティブな意見もあるけどポジティブな意見もあり、みたいなかんじで書かれていて、それはまぁ事実なんだろうけれどももやもや。
第9章 当委員会が認定・評価した事実
ってことで委員会のまとめ。
第10章の 本問題の原因・背景分析
DeNAは何がしたかったんだ、とか、コンプライアンスちゃんとしろよ、とかいかにちゃんとしてないかがまとめられていておもしろい。問題点というか、ダメなところがまとめられている。
第11章 再発防止策の提言
なんかいろいろ書いてるけど「ちゃんとしろ」で集約していいかも。
第12章 本報告書のまとめとして
お疲れさまでした。
最後に
というかんじで感想書いたけれども、DeNAを応援したいというのはあって。というのは大きいし体力ありそうだし、いろんな事業にトライするし、頭いい人がたくさんいるイメージあるし(イメージだけど)、つまりはちゃんとしたところがちゃんとお金かけてちゃんとしたらちゃんとしたものが出来るはずと思うのでがんばっていただきたい。むしろ全方位から喜ばれるような、たとえば美術館の学芸員といった本来の意味での"キュレーション"をインターネットでやって、インターネットで今言われている"キュレーション"の胡散臭さを解消して「キュレーションサイト」って言葉の定義を明確につくるぐらいを標榜するなら超絶応援したい。「見せてやんよ、本当のキュレーション……、ってやつをよ!」ぐらいで帰ってこい〜〜〜〜。
インターネットは誰でもできる(というか参入できる)ことが多いからその中で誰にでもできないことが光るのであって、海外で言われている美術館なんかのキュレーターは学芸員って訳されてるけれども、知見深い学芸員を育てる勢いでキュレーションサイト初めて見るとか。そもそも本来日本での学芸員は国家資格だしキュレーションサイトのあり方を一度検討してよいのではないかしらん。ビジネスになるかわからんけど。むしろビジネスになることを証明すればインターネットが良くなるんじゃないかしら。
ってことでがんばれDeNA。