9回裏最後のバッターの最後の一球を、客席に向かって投げてそのままマウンドからピッチャーが消えてくようなブログ

平日は1000〜2000文字ぐらい、土日は4000文字ぐらい書きますがどちらも端的に言うと20文字くらいに収まるブログです。

あの夏の花火

夜の公園で友人達とした花火はとても良い記憶だ。誰かの花火から火をもらい自分の花火に火をつける。共同作業感がある。真っ暗な公園に火薬の匂いが立ち込める。ねずみ花火にわちゃっ、わちゃっと逃げ惑う。ドラゴン花火が火を上げる。お調子者がその上をジャンプする。花火セットに入っているトリッキーな謎花火なんかもある。ロケット花火に火をつけて打ち合いをする。Tシャツに穴があくので元から捨てるつもりのTシャツを着てくる。ロケット花火の打ち合いで走り疲れてクタクタになる。

 

 

花火は良いよ。美しいもの。

先週、今週、来週にかけて全国で大きな花火大会が開かれる。それは街中であったり、河川敷であったり、海であったり。大きな花火大会はお祭り感で盛り上がる。夜店が並んだ沿道を浴衣を着たカップルがかき氷を片手に歩く。

 

先週終わったけれども大阪の天神祭桜ノ宮というラブホ街がほど近く、当日ラブホテルは満員待ったなしであり、花火が終わった後に行くのではなくむしろラブホテルから花火を見る。道を歩いているとラブホの窓から顔を出しているカップルが散見されてサマー・オブ・ラブ

 

上京する前、大阪にいたときも、東京に出てきてからも年に一回ぐらいは花火大会を見に行っている。それはあるいは付き合っていた女の子と、あるいは付き合いたかった女の子と。大阪では天神祭や、今は天神祭と合同開催になっているけれども、当時は別で開催されていた水都祭、淀川の花火も美しい花火が見られる。初めて大きな花火大会に行ったのは水都祭、河川敷を昇る階段、階段気をつけてとそこで女の子と初めて手を繋いだり。

 

小学校ぐらいまでは実家からPL花火が見えた。PL花火のラストはもう花火というよりももう爆発だ。時が経つに連れて家と花火の間にマンションが立ち並んで、マンションの向こうの空が明るくなる程度で花火は見えなくなってしまったけれど。

 

上京した後には二子玉川の花火や明治神宮の花火をふらっと見に行ったり。芝浦の高層マンションに住まう友人の家、三十数階から東京湾の花火を見ると、夏の星座にぶら下がっているわけではないけれども横から花火を見下ろしたり、aikoが歌うとこんなに好きなんです仕方ないのだけれども、やはり夏というと夜の花火だ。春は曙、夏は夜の花火であり恋は遠い日の花火ではないのはサントリーオールドだ。

 

ドリカムが「今頃あなたも誰かと今年の花火を見てるの?散ってく季節を一緒に生きていける人見つけた?」と歌っていてとてもセンチメンタルな気分になるけれども花火大会というと必ずしも誰かと行くものでもなく、いや、誰かと行ってその美しい花火を見る時間を共有するともちろん素敵なのだけれども、一人で行くこともある。たとえば明治神宮花火なんかは平日にすることもあって、会社帰りに自転車でふらっと近くを通って眺めたり。 その中でも一際印象に残っているのはまだ大阪にいるころ、2008年ぐらいの淀川花火だ。

 

淀川花火というと大阪の繁華街である梅田、いわゆるキタにほど近い場所で開催される。まわりに大きなビルもゴロゴロある。たとえば浪人をしていた時代、梅田の予備校に通っていたおれ、授業中ドーンドーンと大きな音が漏れ入ってきてうるせぇ!ってなるぐらい街中である。

 

2008年、たしかおれが梅田側にいて友人が川の向こう側にいて終わった後に合流しようつって花火が始まるのを待っていたんだけど、そろそろ始まるかなって時間。開始時間の5分ぐらい前に今でいうゲリラ豪雨、当時はたぶんまだそんな言葉はなかったから夕立なんだけれども、大雨が降ってきた。それも雷を伴うような盛大なやつで、外で花火の開始を待っていた人達がわらわらとビルの下、雨が当たらないところに避難してきて。

 

かくいうおれもビルの下にスタンバっていたけれども、周囲はざわついていて、これは中止もやむないかな的な雰囲気だった。あまりにも直前で開催か中止かを知る術もなかった。夕立がいつやむかもわからなかった。楽しみにしていた花火大会が直前で無くなるかもしれない絶望感がそこにあった。とはいえ大雨なので帰ることもできない。どうすっかな的なかんじで待っていると、大雨の中一発の花火が打ち上がった。

 

まじかよというかんじだった。雷がごろごろ鳴っている大雨の中淀川花火は開催された。大雨の中花火がどんどん打ち上がる。雷が鳴る。大きなガラス張りのビルに稲妻が反射される。そしてその横に花火が打ち上がる。稲妻と花火が同じタイミングで見られるというのはなかなか経験することはないだろう。今でも結構鮮明に。それはあるいは思い出補正もあるかもしれないけれども。同じく書いてある当時のブログがあったのでガチであることは伝わるだろう。

 

花火の最中に夕立は止み、最後は花火がアホほど連発、夜の空が昼間ぐらい明るく光る。残念ながらここまで全部一人だ。そんな夏だった。

 

 

今週、来週にかけて全国で大きな花火大会が開かれる。今年の夏の花火がいつか、あの夏の花火になれば。