9回裏最後のバッターの最後の一球を、客席に向かって投げてそのままマウンドからピッチャーが消えてくようなブログ

平日は1000〜2000文字ぐらい、土日は4000文字ぐらい書きますがどちらも端的に言うと20文字くらいに収まるブログです。

KISSから始まるミステリー

土日は本を読むことが多い。というのはなかなか有効な時間の潰し方であり、今までぼちぼちと小説を読んできた。この辺りは以前のブログでも書いている。

 

20to4000.hatenablog.com

 

その中でもここ数年とりわけ読むことが多いのはミステリーだ。ミステリーというと漢検4級の君でも名探偵コナン金田一少年の事件簿なんかはマンガで読んだりアニメで見たりしたことがあるのではないだろうか。

 

犯人がトリックを用いて誰かを殺し、それを名探偵たるところのコナン君や金田一はじめがバッタバッタとトリックを切り崩し謎を解明する。どのようなトリックを用いて犯人は欺こうとしたか、そのトリックを探偵は暴くことができるのか。いたってシンプルなストーリーだ。

 

とはいえミステリーといってもその中身はたくさんある。それは例えば戦術のコナンや金田一のように、誰かがトリックを用いて誰かを殺すようなものがひとつ。これがまぁステレオタイプというか、ミステリーってこういうやつじゃないの?と漢検3級の君は思うのではないだろうか。

 

でもそれだけではない。それは例えば誰かが死ななくてもよくて、誰かが失踪した謎に迫るようなものもミステリーだし、サイコホラー要素が強い怖いストーリーもミステリーだ。青春ミステリやに警察小説もミステリーにカウントされたりする。

 

君が最後にウソをついたのはいつのことだろう。大きいものでも小さいものでも構わない。今日一日さかのぼってみるとそれはたとえば電話がかかってきたけど忙しかったので電話を取った同僚に「今いないと言っておいて」と言ったことかもしれないし、いついつ予定空いてる?と聞かれたけど特に気分が乗らないので埋まってると答えたことかもしれないし、朝、家を出る間際にワイフに「今日は接待があって遅くなる」と言ったことかもしれないし、その後「愛してるよ」と言ったことかもしれない。

 

ここでなぜウソの話かというと、ミステリーではウソというのがキーになる。誰かがウソをついている。それはシンプルに犯人がウソをついているのかもしれないし、犯人に脅された誰かが恐怖からウソをついたのかもしれない。それは乗客全員がウソを付いているのかもしれないし、街全体が共謀してウソをついているのかもしれない。果ては作者が読者に対してウソをついている場合もある。それは厳密にはウソを言っているわけではなく、必要な情報を省くことで読者が勝手に思い込むように仕向ける。つまりはウソを思い込ませて読者を騙すのだ。ウソの規模とレイヤーがストーリーをつくりだす。

 

kinki kidsの歌に「KISSから始まるミステリー」という歌がある。その中の歌詞を一部見てみると、「ぼくは夢遊病、さまよう難破船だよ」という歌詞がある。ウソである。「ソーダ色した風にはしゃぐ君のスカート不思議、妙に妖しい光線を放ってるよ」という歌詞がある。ウソである。「巻き毛が誘って踊る」という歌詞がある。ウソである。ゆえにミステリーである。

 

ともすれば誰がいつ、なぜ、どのようなウソをついたのかが書ければミステリー小説が書けるのかもしれない。それぞれ規模をまばらにしたようなことを持ってくればその内容にそってプロットが仕上がるのではないだろうか。

誰が・・・ヤリマンのOLが

いつ・・・クズな彼氏とケンカした日に

なぜ・・・誰でもいいからセックスがしたくて

どのような・・・酔払ちゃったとウソをついた

この結果どうなるか、そのウソに惑わされて誰がどのような事になるかが固まれば、そのまわりに巡る人間関係などを書き連ねればひとつのミステリーになるだろう。これで芥川賞はいけそうだ。タイトルは「KISSから始まるミステリー」でどうだろう。素敵な物語になりそうだ。

 

ウソというのはミステリーだ。現におれはこの本文中でもウソをついてる。まるでウソみたいな世界だから。